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■東西のデザインが融合されたベトナムデザイン

 ベトナムは、ご存知の通りその歴史の中で、中国におよそ千年間、そしてフランスにおよそ100年間植民地として支配されるという悲劇的な運命を背負った国家です。しかしながら、逆にそのために、ヨーロッパとアジアのそれぞれの文化を民族の文化の中に取り入れて発展させるというプラスの面も併せ持つことになりました。

 ベトナムで仕事をしていると、ときどきフランスやイギリスなどヨーロッパから来たバイヤーと話す機会がありました。彼らの求めているものは、東洋的な素材やデザインなのですが、ベトナムのデザインのなかにそれとは知らずに、彼らの好むような西洋的要素が含まれていて、だからこそ彼らにベトナムの工芸品が広く受け入れられていくようです。

 たとえば、フランスのバイヤーがベトナムへカーテンの生地の買い付けにやってきたのですが、ひとめ見てチャム族の手織りの生地を気に入ってしまいました。淡い色合いの生地を沢山織らせて素敵なカーテンに仕立ててフランスへ輸出しました。
 また、ダラットという避暑地にある高級ホテル、パレスホテルの支配人も、チャムの生地を気に入って、テーブルクロスに仕立てました。淡い紺色にクロスの文様が入った落ち着いたデザインのクロスが出来上がりました。




 ■アールヌーボーとベトナム
 フランスの19世紀はアールヌーボーと呼ばれる芸術運動の盛んな、とてもアーティスティックな時代でした。その時代に植民地となったインドシナ半島には、たくさんのフランス人と、彼らがフランスから持ち込んだ美術品や家具インテリアなどが流入してきました。ベトナムには、フランス人による美術の教育や建築学校などが出来、街中にアールヌーボー様式のデザインがあふれました。

 1975年のベトナム戦争終結とともに、共産革命によって多数の芸術品や建築物が摂取されたり取り壊されてしまいましたが、今でもサイゴンの骨董品街にゆくとフランスの美術品にお目にかかることが出来ます。私には骨董品の目利きはできませんので、そのようなものを購入したりビジネスにしたりすることは出来ませんが・・・。建築物はサイゴンの中央郵便局や人民委員会の建物、コンチネンタルホテルなど、その当時の姿を残している建物もたくさん残っています。

 骨董街でエミールガレ(Emile Galle, 1846-1904)の作品とされるランプシェードを見かけることがあります。本物だったらものすごい掘り出し物なのですが、まあ数千ドルをどぶに捨てることになりそうなので、購入することはしません。しかしながら、実際にガレの作品も多数ベトナムに渡ってきた事は間違いないようです。

 ガレはもともとフランスのロレーヌ地方の出身でガラス細工やインテリアのデザイン会社のオーナーであり、ちょうどアールヌーボーの時期に活躍した芸術家です。彼はフランスのアールヌーボー文化の代表者の一人ですが、実は日本の文化をとても好み、日本風のデザインのインテリアなどもいくつか作成しているほどです。
 東洋のデザインに影響を受けた芸術家の作品がさらに東洋のインドシナに渡り、そこの文化にまた影響を与えるという現象は、とても面白いものですね。

       


 ■ベトナムの伝統工芸

 ベトナムの伝統工芸品というと、真っ先に思い当たるのは漆細工とシルクの刺繍、そしてバッチャンやソンべの陶磁器でしょうか。もちろん、伝統民族衣装のアオザイも忘れてはなりません。

 アオザイ:
 アオザイの始まりは、グエン王朝の時代に中国の清王朝の官人の朝服を簡略化したものがアオザイと呼ばれ、それが一般の人に広がったのが始まりです。その後1930年ころにハノイの美術家たちによる服装改良運動によって、布地のパターンやカット方法を改良しシルエットを現在の形に変えました。
 アオは衣装の意味、ザイは長いを意味します。チャイニーズ風の長いジャケットに、下はゆったりとしたパンツを着用します。女子学生は白いアオザイを着用、会社員でもアオザイを着用している女性が多く、現在の生活に定着している衣装といえます。男性用のアオザイもありますが、冠婚葬祭などで着られる程度です。

 漆工芸品:
 漆工芸はアジアに古くから伝わるものでインド、中国から伝わったもので、ベトナムでは12世紀ころに、ベトナムの北部のPhu Tho省で漆の栽培が本格的に行われるようになりました。現在では貝殻で模様を入れる螺鈿細工が盛んに作られるようになってきましたが、デザインもアジア的なものから、現代美術の要素を取り入れたものまで作られています。

 陶磁器:
 陶磁器も古くから日本へも輸入され、安南焼きと呼ばれていた、現在のバッチャン村で製作されている陶磁器が有名です。このバッチャン焼はシンプルな手書きの絵柄が特徴で、赤絵と呼ばれる色絵筆で花や鳥とんぼなどを描いた伝統絵柄のものや、青磁(セラドン焼き)、白磁、安南染め(白磁の釉下にコバルトで青く絵付けをしたもの)、などの種類があります。
 また、サイゴンの近郊にあるソンベ村で焼かれる陶磁器も、美しい絵柄で人気となっています。

 シルクの刺繍については、別に紹介してるので、ここでは紹介を省きます。
 知る人ぞ知る伝統工芸では、ハノイ北部のドンホー村で製作されているドンホー版画があります。これは昔からの生活を描いた版画で、テト正月の風物詩となっています。また、陶器の破片で造られるモザイク絵画はフエの皇帝廟を装飾するほど、伝統ある工芸なのです。

 ベトナムの歴史やデザインを勉強すればするほど、その面白さと、難しさに、ますます興味が沸いてきます。できればひきつづいて、このサイトで紹介して行ければと考えています。


                
            バッチャン焼き                           鼎をかたどった石造りの香炉


漆細工の茶碗セット 



ドンホー版画





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